マスクに垣間見えるブランド力と価格設定における功罪

私はIgA腎症という腎疾患を抱えています。感染症にかかると腎機能が悪化しやすいため、常日頃から感染症には大変注意を払っています。

インフルエンザシーズンは外出時に必ずマスクを着用し、シーズン終了後も私は花粉症持ちのためマスクが欠かせません。12月から4月まで、つまり、1年のうち5カ月間もマスクを着用するマスクのヘビーユーザーなのです。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、マスクが品薄となっていることが報道されています。ただ、最近は少しずつ店頭に並ぶようになってきているみたいです。

こうした状況下、大手家電メーカーの「シャープ」がサージカルマスク製造販売に着手することを発表しました。それについて、「ブランド」と「価格」の観点で私見を述べます。

 

シャープのマスクはサプライズではない

シャープは、日本国内の成人では、知名度が100%近いのではないでしょうか。高い研究開発力や技術力を持ち、製品の品質においても抜群の信頼感があると私は思っています。そんなシャープが畑違いのマスクを作るのです。正直、私はそんなに驚きはしませんでした。シャープに限らず、どこかの大手メーカーがマスク製造に乗り出すことは、あり得ることだと思っていたからです。

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日本一ブランド力の高いマスク

シャープがマスクを販売したことで、一躍、日本一ブランド力の高いマスクとなったと私は捉えています。何種類かのマスクを目の前に出され、「どれか一つだけ好きなものを持って帰ってもよい」となったら、迷うことなくシャープ製のマスクを私は選択します。品質に対する安心感が群を抜いているからです。これは、これまでコツコツと積み上げてきたステークホルダーとの信頼関係の構築、つまり、ブランド構築の賜物のほかにありません。シャープというブランドなら大丈夫、安心安全、間違いない、と自然と思ってしまうわけです。畑違いのマスクにおいても、このブランドが少しもかすむことはありません。

このたびのコロナ禍で、聞いたこともない業者がここぞとばかりにマスク販売に乗り出しています。もちろん、中には、本当にマスクが不足して困っている方々のお役に立つためという業者もあると思いますが、業者がはびこること自体がマスク不足の一因になっていると私は思っています。こうした業者のマスクとシャープのマスク、同じ天秤にかけることがバカバカしく感じるのです。

2980円はやむなしか

コロナ禍以前に、私が購入していたサージカルマスクは、50枚入りで500~700円でした。シャープのサージカルマスクは50枚入りで2980円です。私が普段購入していたものの約5倍の価格です。

シャープの価格設定についてですが、シャープは500円だろうが2980円だろうが、実はいくらでもよかったのではないかと私は捉えています。シャープはマスクで直接会社を潤そうなんてこれっぽっちも考えておらず、コロナ禍における国民のお困りごとを解決しようとする、超一流企業としての社会的使命、および、さらなるブランド力向上を狙いとしているのではと私は考えます。

ただ、マスクにおいては後発企業なので、市場をかき乱すことを避けるというために時価を参考にした価格設定をしたのでしょう。したがい、2980円は正直高いですが、やむなしと私は思います。

平時の市場価格が吊り上がらないか心配

マスクに関する心配事が一つあります。新型コロナウイルス収束後、マスクは通常の流通量に戻ると思いますが、その時の価格がどうなっているかです。

マスクを製造販売している国内企業の中で、シャープは断トツで企業規模が大きいはずです。そうしたシャープが設定した価格が、今後のマスクの価格に大きく影響を及ぼすのではないかと思うのです。「あのシャープが50枚入りを2980円に設定したのだから、適正価格は2980円だ」と業界全体が都合よく捉え、カルテルのごとく横並びですべての業者が価格を吊り上げるのではないかと心配しているのです。2019年10月に行われた消費税8%から10%への増税時も、ここぞとばかりにあらゆる業界が横並びで値上げをしました。ポイントをすり替えて、それをあたかも大義名分のようにしてしまうのです。

シャープの2980円設定は仕方なかったことは納得しますが、普段からマスク50枚入りを500~700円で購入していた私にとって、今後のマスクの価格は本当に大きな心配事なのです。

ちなみに私はシャープの関係者でも何でもありません。自宅にシャープ製品は一つもありません。この話は、シャープが偶然マスクを製造販売したからシャープの企業名を挙げていますが、パナソニックでもソニーでもブランド力のある大手メーカーならば、どこでも同じことが言えるのです。