IgA腎症罹患者が生命保険と住宅ローンについて考察する【前編】

 

IgA腎症は生命保険に入れない

私がIgA腎症の診断を受けた2011年当時は、IgA腎症になれば生命保険に加入できない、住宅ローン(団体信用生命保険)を組めないというのが定説でした。

私は2002年に最低限の保険金額が支払われる終身の生命保険に加入しました。2010年に保険金額を増額しようと見直しを試みましたが、健康診断で落ちてしまいました。血圧検査、尿検査で引っかかってしまったのです。その翌年にIgA腎症の診断が下されるのですが、その症状がもろに出たということです。

特に大きな資産も保有しておらず、年収500万円ほどの会社員である私にとって、生命保険に入れなかったり住宅ローン(団信)を組めなかったりということは大問題です。IgA腎症の症状が出る前であれば問題なかったのに、症状が出てしまった後では手遅れなのです。当時は何ともやるせない思いでした。もちろん今でもやるせない思いであることに変わりはありません。

いつの間にかリリースされていた引受緩和型商品

つい最近、とある情報誌を目に通した際に、「引受緩和型保険」という文字に目が留まりました。保険料率が少し上がりますが、持病や既往症のある方でも加入できる保険商品とのことです。いくつかの保険会社の商品を見てみたのですが、条件さえ満たせばIgA腎症罹患者でも加入可能な商品がほとんどです。こうした商品は、私がIgA腎症の診断を受けた2011年当時にはなかったと記憶しています。

ワイド団信なるものもリリース

住宅ローンの団体信用生命保険においても、引受緩和と同様の「ワイド団信」なるものがいつの間にかリリースされていました。もちろん、通常の団信よりも負担割合は大きくなる商品です。少し調べてみましたら、auじぶん銀行のワイド団信は、IgA腎症の引受実績があるとのことです。

少子高齢化と価値観の多様化が要因か

引受緩和型生命保険やワイド団信といった商品が世に誕生した背景には、少子高齢化や価値観の多様化が大きくかかわっていると思います。

高齢化に伴い病気を抱える人が増え、これまでの基準では審査が通らない人が増えたことが考えられます。また、価値観の多様化により、特に若い人を中心に、わざわざ保険に入る必要があるのか、ローンを抱えてまでマイホームを買う必要があるのかという考え方をする人が増えているのではないでしょうか。すなわち、保険商品が売れなくなってきたので、入りやすい商品ラインアップを増やしているのです。保険会社も必死なのです。

ただ、背景がどうであろうと、こうした商品は、私たちのような持病を抱える人間にとって大変ありがたいことです。

私は引受緩和もワイド団信も申し込まない

さて、つい最近、引受緩和型保険やワイド団信の存在を知った私はどうかと言いますと、特に心は動かされていません。2011年当時も今も、やるせない思いであることに変わりはありませんが、10年経つと価値観も変わり、冷めた言い方をすると、どうでもよくなったのです。このあたりの詳細については、次回の【後編】で説明します。

されども保険に入るならば早いに越したことはない

生命保険や住宅ローンを組むのならば、どちらにしても健康体のうちであること越したことはありません。大きな資産を保有しており、生命保険が不要であったり住宅を一括購入できたりする方以外は、生命保険や住宅ローンに携わる可能性が高いと思います。私のように、通常の生命保険や住宅ローンの審査に落ちたり、引受緩和で下手に負担が大きくなる前に、速やかに決断することも大切かもしれません。

 

次回の【後編】では、IgA腎症を患った身として、生命保険や住宅ローン(団信)を通して芽生えた心境について記します。