温泉巡りの醍醐味が詰まった「北温泉」初探訪記⑦2日目は北温泉宿泊編その5(天狗の下で拉致監禁)

「おい、ちょっと待て!」

湯けむりで目の前が真っ白になり、周りが全く見えない中、北温泉天狗の湯で冷え切った体を温めていました。ほどなくして湯けむりが落ち着き、視界を取り戻しました。ちょうど私は天狗の湯の最も大きい天狗の真下に入浴していたのですが、一組のカップルか夫婦と思われる男女が湯口近くの縁で座っているのが目に入りました。「外は寒かった?」といったようなことを女性に声をかけられたと記憶しています。「はい、とても寒かったので、少し温まらせてください」といったようなことを答えました。あまりお邪魔するのも何なので、あと2分ほどしたらお暇しようと思っていたところ、何やらもう一組のカップルか夫婦と思しき男女が天狗の湯にやって来て、湯口の対面の方に陣取りました。(2組ともご夫婦でした)

何やら互いの夫婦同士が普通に話し出すので、あー、お連れ様ですかと。それならば、なおさらさっさとお暇しようと「それでは失礼します」と湯舟から出ようとしたところ、「おい、ちょっと待て!」と後から来た夫婦の男性に呼び止められました。お世辞にもガラが宜しくない呼び止められ方だったため、ノミの心臓である私はドキッと恐怖に駆られ、とりあえず湯舟の縁に腰を掛けました。いや、ひょろひょろっと腰が砕けたのかもしれません。

お絵描き、ですね…

私を呼び止めた男性は、哀川翔さんに似ていたので仮に「哀さん」とします。その奥様は、ものまね王座決定戦に出演していた頃の森口博子さんに似ていたので「ひろさん」とします。湯口近くの縁で座っていた男性は、坊主だったので「坊さん」、その奥様は広瀬すずさんを10歳大人にしたような感じだったので、「すずさん」とします。お世辞抜きにめっちゃ可愛かったです。30歳の広瀬すずさんが目の前にいるのです。しかも、手ぬぐいタオルで前を隠すくらいのなかなかあられもない姿で。しかし、その隣にいる大柄な坊主の男性が私に睨みをきかせていたかどうかはわかりませんが、睨みをきかせていても全くおかしくないような状況です。その坊主頭で思い出しました。自炊場を覗いた時に、器用に野菜の皮むきをしていた男性です。その坊主の男性を凝視せずともさらっと目を向けるだけではっきりとわかりました。体全身にお絵描きがあることを。

f:id:nirvana554:20200321230223j:plain

私は天狗の下、つまりお誕生日席で2組のカップルに囲まれました

詰問責め

哀「何で逃げようとした?」

詰問責めの始まりです。頭の中はほぼ真っ白になっていましたが、言葉遣いだけは間違いのないように気を付けようという意識だけは働きました。

私「いやいや、ちょうどのぼせてきましたし、皆さんのお邪魔になるとよろしくないと思いまして、お先に失礼しようと思いました…。」

哀「そんなこと気にせんでいい。どっから来た?」

私「名古屋からです…。」

哀「名古屋からわざわざ来たんか?」

私「昨日、岩手に出張で行ってまして、今日は宇都宮で用事があり………。」

と、名古屋住まいの私が栃木北部の山奥にある北温泉にたどり着くまでの行程を事細かに説明する事態となっていました。

哀さんの奥様のひろさんは、「名古屋からわざわざここに来るって、よほど温泉が好きなんだね」と、ごく普通の会話をニコニコしながらおっしゃるので、この人は話が通じる人だと少しは気持ちが落ち着きそうになりましたが、「何か聞き捨てならない理由があるんじゃないのか?」と哀さんが突っ込みを入れてきたので、私の気分はあっという間にどん底に突き落とされました。聞き捨てならない理由っていう聞き方自体がすでに意味が分かりません。

その後も詰問が続き、1時間ほど経過した頃でしょうか?坊さんが、「そろそろ部屋帰ろう」とおっしゃられ、4人が着替えを始めました。やっと解放 されるとホッとしていたのもつかの間、哀さんから「お前もやぞ!」と言われ、えっ??私も何なの?となり、私もあなた方の部屋に行くということですか??何しに行くのですか?何も面白いことは提供できませんし、私があなた方の部屋に伺ったところで皆さんにとって何一つメリットなんかございませんよ、と心の中で叫びながら、4人の誰かに背中を押され、4人の部屋におずおずとお邪魔することになりました。

次回は、部屋での拉致監禁。第二ラウンドの始まりです。