温泉巡りの醍醐味が詰まった「北温泉」初探訪記④2日目は北温泉宿泊編その2(北温泉チェックイン)

北温泉への道中には「鹿の湯」がある

老松温泉から北温泉までは、車で15分ほどです。栃木県道17号那須高原線の山道を登っていくわけですが、そのふもとには、那須湯本温泉で最も有名と思われる「鹿の湯」があります。鹿の湯は当然、温泉好きにとってスルーするわけにはいかない存在であるのですが、前日宿泊した大出館での朝風呂、チェックアウト後の岩の湯、そして老松温泉と立て続けに入湯しており、この時点で私は完全に湯疲れしてしまっていました。しかも、この日のゴールである北温泉が目の前に迫っているとあり、泣く泣く鹿の湯はスルーしたのです。

この日以来、4回北温泉に宿泊し、その都度、鹿の湯の前を通るのですが、結局今まで一度もその暖簾をくぐったことがありません。初めて訪れた、この2015年に入浴しなかったことで縁のない温泉であると自分で決めつけているような気がします。さらには、北温泉の近隣にもっと入ってみたいと思う魅力的な温泉を徐々に知ってしまったことも理由の一つです。

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鹿の湯。流石は那須湯本の大将的存在。平日の金曜日の15時ころにもかかわらず、訪問客の車は多い

 鹿の湯の近くには那須温泉神社や殺生石があり、那須湯本観光地の中心的な場所となっています。殺生石は何と言ったらいいのでしょうか?登別温泉の地獄谷と青森県の恐山を足して2で割った感じではないでしょうか。ちなみに登別温泉の地獄谷には行ったことがありますが、恐山は行ったことがないため、完全に私の勝手な妄想ベースの雰囲気を述べています。ただ、温泉地にはこのような簡単に散策できる観光スポットというのは割と付き物であるような気がしており、それはそれで大切な存在であると思っています。

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殺生石のスタート地点。往復約500mの散策。ほどよい距離です

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殺生石の中ほど。何となく登別温泉の地獄谷と恐山を足して2で割った感じしませんか?あれ?草生えてますね…

北温泉の駐車場では滝がお迎え

殺生石を後にし、いよいよ北温泉に向かうのみとなりました。栃木県道17号那須高原線の山道をただひたすら10分ほど登ります。

ここから記載することは、2019年5月のゴールデンウイークを利用して北温泉に宿泊した時に気づいたことなのですが、殺生石から北温泉までの栃木県道17号那須高原線の両脇には新緑の木々が生い茂っていました。しかし、山道の中ほどから、いきなり枯れ木に変わってしまうのです。本当にいきなりです。いきなり別世界に迷い込んだ感じになります。気にしなければ素通りしてしまうと思いますが、私は頭の中が一瞬「!?」となりました。標高が高くなり、気温が低くなるため、ある境界線で、樹木の生長に影響を与えるということなのだと思います。5月上旬という晩春ならではということで拝見できる現象なのかもしれません。

2020年のゴールデンウイークも北温泉での宿泊を予定しており、栃木県道17号那須高原の両脇にそびえる樹木の変化を楽しみにしています。

脱線しましたが、はやる気持ちを抑えながら車を運転し、ついに北温泉の駐車場に到着しました。送迎用でしょうか、北温泉名入りのバンが駐車しています。

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北温泉の駐車場に駐車していた北温泉名入りのバン。乗ってみたい。いや、運転手になりたい

駐車場からは駒止の滝という滝が見えます。山の木々に囲まれ、しかも見下ろす形で見えるので、とても風情が感じられます。

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駒止の滝。「北温泉にいらっしゃい」と言っているようには見えないが、そう言っていると思って一人勝手にテンション上げます

駐車場からは400mの山道を徒歩で下ります。私は元来、気が弱い性格でして、実はこの時、逃げ出したい衝動に駆られていました。タイプの女性と奇跡的にもデートできるとなった時に、待ち合わせ直前に逃げ出したくなるあの感じと同じようなものだと思います。わかる人にはわかるはずです。つまり、私はそれほど北温泉に恋焦がれていたということです。

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この看板を見たとき、初対面まで間もなくと悟り、緊張感がMAXでした

北温泉到着。テルマエで見た光景が目の前に広がる

駐車場から北温泉玄関までの400mの山道は、少し急な下り坂があったり、そういうところに限ってヘアピンカーブになっていたりと、高齢の方には苦難な道のりだと思います。緊張感でいっぱいいっぱいになっていた私は、違った意味で呼吸が上がっていました。

山道を下りきったところで北温泉の看板が目に入りました。テルマエロマエの映画で北温泉を知ってから苦節3年半。名古屋からは最も遠いと言っても過言ではない栃木県最北端。行ってみたいとは思っても本当に行けるかどうかわからないと思いながら過ごした3年半。出張がらみのラッキーがあり、とうとう来てしまいました、北温泉

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北温泉で最初に撮った一枚。風格ある看板。左に見える山から流れてくる湧き水。右手に見える正面玄関。お気に入りの一枚です

玄関までの最後の直線をドキドキしながら歩いていると、右から目に入ってきたのは、ローマの道へと通じるプール風呂がありました。あれ?湯の溜まり方が浅いような気がします。後で宿の方に聞いて分かったことですが、金曜日は清掃日で午後から湯を貯めるそうです。この時は16時。まだ半分くらいしか溜まっていませんでした。そうしたプール風呂を見れるのも貴重なことかもしれません。

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阿部寛さんと上戸彩さんも溺れたプール風呂。実際は湯が満杯に溜まって1mそこそこの深さです。

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半分くらいしか溜まっていないプール風呂。貴重な一枚。滑り台側はまだ全く溜まっていません

北温泉に来るにあたり、後ろめたさがありました。テルマエ世代であるということがです。テルマエロマエ北温泉の存在を知ったということは、謂わばミーハーです。一見で来た客が北温泉や常連客の方々に多大な迷惑をかけたり、北温泉の評価について心にもない暴言を吐いたりすることが多々あっただろうことは想像に難くありません。一見ミーハーなんて総じてそんなものです。北温泉でお勤めの方は、こんな私に対しても、ミーハーだからと構えられるのではないかと玄関を開くことに少し躊躇する気持ちがありました。

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この階段を上ると、いよいよ北温泉の玄関に到着です

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玄関に到着です。緊張と不安が入り混じった心境のまま、玄関に手をかけました

玄関の中に入り、少しの間戸惑っていると、帳場から一人の女性が出てきました。「今日はお泊りですか?」こんな風に声をかけられたと思います。穏やかな感じで、見るからに優しそうな雰囲気だったので、私の緊張と不安は幾分緩和されました。靴を脱ぎ、下駄箱の指定された場所に靴を置きます。下駄箱は玄関の左側に隣接してあるのですが、その下駄箱一つとっても、歴史ある温泉宿を感じさせます。昨年、常連客の方から聞いたのですが、この時に対応していただいた女性を、大半の人が女将と勘違いしているとのことです。私も然りで、この初めての北温泉宿泊以降2年間は、この女性を女将さんと勘違いしていました。大変失礼いたしました。

玄関から右側にある帳場でチェックインの手続きです。帳場を含め、目に入る光景すべてが本物の「昔」です。最近は、飲食店や介護施設などで昭和やそれ以前をイメージしたつくりのものがありますが、昔をイメージして新しく作られたものと、そもそも昔に作られたものは、根本的に年季の入り方が違います。昔の旬のものが、時を経て、今、さらに輝きを増したものとなっています。これが北温泉ということです。

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帳場から振り返った館内の光景。鈴緒の奥の扉の向こうには階段がある。翌日、その階段を上ってみた

帳場の女性に、この日宿泊する部屋に案内してもらいました。ギシギシ鳴る板敷廊下を歩き、さらにギッシギッシ鳴る板敷の階段を上り、訳があって結局一睡もできなかった私が泊まる部屋にたどり着きました。一睡もできなかった訳は、後ほどしっかりと書きたいと思います。

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この日の部屋は、松の313号室

「松」の部屋は、江戸後期に建てられ、「竹」の部屋は明治に、「梅」の部屋は昭和に建てられたとのことです。つまり、江戸から昭和にかけて、増改築を繰り返して、今の北温泉旅館になったということです。ということは、当然泊まるのは、「松」ということになります。私にとって選択の余地はありませんでした。

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6畳と広縁らしき空間。こたつ付き

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コイン式テレビ。もちろん見ることなし。この日は冷蔵庫も使わず

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何と、玄関の真上の部屋!ホテルに例えると、ロイヤルスイートルームということになります。目の前に見える一本道を延々と歩いてきたわけです。ということは、延々と歩いて帰るということです…