温泉巡りの醍醐味が詰まった「北温泉」初探訪記①準備編

このエピソードを記すためにブログを始めた

私が、栃木県の那須にある「北温泉旅館」に初めて宿泊したのは、2015年11月のことです。この時のエピソードを文字にして残しておくことを目的にブログを始めたといっても過言ではありません。

温泉巡りが一番の趣味である私ですが、その中でも初めて北温泉旅館に宿泊した時が最も印象深く、それゆえ、現在、2020年1月時点では、まだまだこの時の記憶が鮮明に残っています。しかし、年を重ねるごとに記憶が曖昧になったり、どこかで記憶がすり替わったりする恐れがあるため、今のうちに備忘録として文字に起こしておくことにしました。

これまで17年間、さまざまな温泉を巡り、数々の素晴らしい体験をさせていただきました。年を重ねるにつれて、自らの価値観も変わっていくため、北温泉初探訪の体験が今後もずっとオンリーワンの素晴らしい思い出として認識しているかはわかりませんが、まずはこのエピソードを執筆し、温泉巡りに興味を示している方の目に留まり、温泉を巡るとこうしたエピソードも体験することがあるということをお伝えできたらと思いました。だからと言って、決してものすごく稀有なエピソードというわけではありません。あくまでも、私にとっては思い出深いエピソードということです。

一方、この先も温泉巡りを継続しますので、この時のような印象深い体験に、もう一度出会えないかと心のどこかで期待しているのです。そうした思いも込めて、執筆したいと思います。

このエピソードは、温泉に長けていたり、温泉通であるかどうかは、ほとんど関係ありません。ただし、北温泉旅館の環境やリソースが、劇的なノンフィクション物語に仕上げたものと思います。つまり、温泉巡りをしているからこそ出会えたということです。

北温泉」初探訪記は、4編で構成したいと思います。①準備編、②初日は大出館宿泊編、③2日目は北温泉宿泊編、④北温泉チェックアウト編、です。これを書いている時点で、全体の骨子は何も用意していません。記憶をたどりながらぶっつけで文章を書いていきます。

気分に任せてぶっつけで文章を書いていきますので、この先、事実誤認や新たなソースが発見され次第、修正を繰り返していきたいと思います。

栃木・福島は、最も遠いオアシス

私は今も2015年当時も名古屋に住んでいます。

日本列島のほぼ中央にある名古屋(愛知県)から最も遠い都道府県は、沖縄県です。その次は北海道です。そして、青森県、鹿児島県と続きます。これは、距離の話です。また、すべての交通手段を使ったとして、最も時間がかかる都道府県は、どこだかわかりません。

一方、心理的に名古屋から最も遠い都道府県は、私の中では福島県、次いで栃木県です。なぜなら、直通の飛行機がない、そして、東海道新幹線が通っていないからです。名古屋から遠出する際の交通手段は、飛行機、東海道新幹線、自動車。この3つが主な手段となります。名古屋に住んでいる人にとって、この3つの交通手段を使えない場合は、遠出する際の行き先として、二の足を踏んでしまいがちになると思います。

名古屋から栃木県に行く場合、今では私はマイカーで行きますが、一般的には、東海道新幹線で東京まで行き、東京から宇都宮へは東北新幹線で行きます。福島に行く場合は、同様に東海道新幹線東北新幹線の合わせ技か、山形か仙台まで飛行機で行き、そこから南下するという手段だと思います。つまり、栃木県や福島県へは、主要な交通手段だけで行けないことに不便さを感じるわけです。

私は、2015年11月までの生まれてから三十数年間、栃木県の地に足を踏み入れたことはありませんでした。しかし、温泉巡りを通して、栃木県や福島県は大変魅力的な温泉地だということを知り、最近はぜひ行きたいという思いで悶々とした日々を過ごしていたのです。2015年10月時点で、茨城県を除き、栃木県・福島県に隣接する群馬県、埼玉県、宮城県山形県新潟県には行ったことがあったのです。埼玉県以外は温泉目当てで行きました。関東圏の方にはあまりピンとこないかもしれませんが、中部圏に住んでいる者にとって、栃木県と福島県は(茨城県もそうですが)心理的に本当に遠いのです。行きにくいのです。実際に行ってしまえば何てことないということがわかりましたが。いや、やっぱり遠いです…。

奇跡の出張。ブレジャーで栃木へGO!

2015年9月、私に栃木県行きのチャンスが訪れました。

仕事の用事で、西日本への日帰り出張が入ったのです。同じ部署の別の方は、岩手県・栃木県への宿泊出張が入りました。ところが、その方が宿泊は難しいとなり、私と交代してほしいとのことで、私は晴れて、栃木行きが決定したわけです。正直、この時は仕事そっちのけで、どういう風にして温泉を巡ろうかと、温泉巡りのスケジュール立てのことが頭の中を99%占めていたと思います。

いや、課された業務はしっかりとこなしますが、そのあとの温泉巡りを最大限楽しむために、どういう日程でどういうルートで回ろうか?どこに泊まろうか?1週間ほどはそんな計画立てでワクワクしていました。

この時の出張は、岩手県と栃木県です。つまり、出張業務をどちらの県で終了するかで、巡る温泉地が決まるというわけです。私は過去、2010年に岩手県の温泉地を巡ったことがあります。秋田空港から入り、秋田県では水沢温泉、鶴の湯、黒湯温泉孫六温泉玉川温泉、蒸ノ湯温泉。岩手県では網張温泉、松川温泉、大沢温泉鉛温泉を巡り、岩手空港から名古屋へ帰るという3泊4日の旅でした。岩手県の魅力はしっかりと肌で感じており、まだ訪れていない魅力的な温泉地も沢山あるため、岩手県をもう一度巡ることも頭をかすめました。しかし、こういう機会を生かさなければ、栃木県に行くことは一生ないのではないか、これは、温泉の神様がくれたチャンスではないかと信じ、出張業務を栃木県で終了するスケジュールを組み、その後、栃木県の温泉地を巡るという意思決定をしました。

私はテルマエ世代です

私は「テルマエロマエ」世代です。つまり、映画「テルマエロマエ」を見て、北温泉旅館を知り、憧れた人間です。映画で見た天狗の湯、プール風呂、年輪を深く刻んできた建物は私の脳裏に焼き付きました。是が非でもここに行き、温泉に浸かり、泊まってみたいといった欲が深まっていきました。

一方、テルマエ世代の大半は、みいちゃんはあちゃんであり、実際に「テルマエロマエ」を鑑賞して北温泉に訪れた場合、多くの人が北温泉に対して批判的な評価を下すだろうと推測していました。昨年、テルマエよりも遥か前からの常連客の方々にその辺のところを質問したところ、テルマエ上映後、宿泊客は急増したとのことです。ただ、設備面やホスピタリティ面などの不満で、平気で文句を言うお客さんが多かったとのことです。リゾートホテル並みのサービスを期待していたということなのでしょうか。そういったサービスがないところに大きな魅力があるわけで…。

私は「テルマエロマエ」のおかげで北温泉の存在を知りましたので、テルマエロマエには感謝しています。しかし、テルマエ世代はミーハーであるということが、世論と同じく私自身の認識でもあり、自分自身もその世代の一人と思うと、何か後ろめたい気持ちになります。テルマエロマエより前からの常連客の方々が羨ましく、また、尊敬の念が生まれています。

温泉通の方々のブログを参考にする

さて、せっかく栃木県を回るわけですので、1泊2日ではもったいない、2泊3日の旅程を組むことにしました。本業の出張業務でお世話になる方々との調整を図り、2015年11月18日に岩手県で業務、そのまま岩手県で宿泊、11月19日に栃木県に移動、業務、16時に宇都宮で業務終了、という出張スケジュールを組みました。

すなわち、2015年11月19日(木)16時から11月21日(土)までの2泊3日が、私にとって初の栃木県温泉巡り旅ということになります。どこの温泉を巡ろうか、どこの温泉宿に泊まろうかと、ワクワクしながらリサーチをしていましたが、この時、最も参考にしていた情報源は、ブログでした。温泉巡りに長けた方々が、情報満載のお宝箱のようなブログを立ち上げていらっしゃいますので、それらを参考に行き先の目当てを決めていました。名古屋住民にとって、栃木県の情報って本当に少ないのですが、温泉ブログの世界だと、栃木県の情報は湯水のごとく溢れています。それほど栃木県は、温泉における聖地ということなのでしょう。

数多の温泉地を巡られ、その体験記を臨場感あふれる写真や読み応えのある文章でもってブログにアップされている温泉通の方々には、本当に感謝していますし尊敬しています。そうした方々が惜しみなく公開されている情報こそが、私の温泉に関する知識の源となり、私が巡る温泉地の判断の最も拠り所となるものなのです。

私は決して温泉通の皆さまのようなブログを作ることはできません。客観的な目線での感想を述べることもほとんどないと思います。しかし、自分本位の内容だからこそ、私と同じアラフォーサラリーマンといった境遇で、温泉巡りに一歩踏み出したいと思っている方々にとっては、心に刺さる方もいるのではないかと思っています。

1泊目「塩原元湯温泉大出館」 2泊目「北温泉旅館」

さて、行程決めですが、栃木県は面積が広く、主要な温泉地が東西南北あらゆる所に点在しているということを、この時初めて、地図を眺めて知りました。23日ではすべてを回ることは不可能ですし、その中でも、後悔しないベターな選択は、宿泊先を妥協しないことです。一泊はもちろん「北温泉旅館」。もう一泊も北温泉旅館。といきたいところなのですが、せっかくの初栃木県なので、別の温泉宿も体験したいというもったいない精神やケチな性格が働き、もう一泊は「塩原元湯温泉大出館」を選択しました。「墨の湯」、これに惹かれたわけです。この時点で黒い湯に浴した経験がなく、しかも透き通った黒い湯ではなく墨汁のような濁った黒い湯との情報を、温泉通の方のブログで拝見していたので、ぜひ入浴してみたいと思ったわけです。鄙びた、いかにも崩れ落ちそうな浴場の壁面も、直接自分の目に焼き付けたいと思いました。

16時に宇都宮からスタートと遅めの出発ですので、一泊目は近い方の「大出館」、二泊目は「北温泉」ということにしました。大出館をチェックアウトして北温泉にチェックインする間に、塩原温泉那須湯本温泉のどこかに立ち寄るという行程にしました。立ち寄る温泉は、事前にある程度リストアップをしておき、その時の気分次第で決めていきます。

このご時世、電話も案外ありかも。電話予約の効能効果

両旅館とも電話で予約しましたが、大変親切に対応していただきました。大出館は若女将さん、北温泉は、多くの方が女将さんだと勘違いしている女性スタッフの方に電話に出ていただきましたが、これらの宿に予約してよかったと電話口から感じ取りました。たまにあるんですよ、電話口だけでこの宿に泊まるのはやめようと思うことが。

余談ですが、20147月に宿泊した青森県岩木山麓にある「あすなろ温泉旅館」も電話で予約したのですが、女将さんの方言が強かったので、何度も「もう一度言ってください」と聞き直したことを記憶しています。それに対して女将さんはイライラすることなく、丁寧に何度も説明してくれました。できるだけ標準語に近づけようと努力しながら説明されていたと思います。それでも本当に予約が成立しているのか、実際に宿に伺うまでずっと不安でした。宿泊当日の正午近くに私の携帯電話が鳴りました。あすなろ温泉旅館の女将さんからです。「源泉が熱いので、お越しになる前に部屋風呂に湯を貯めておきましょうか?」といった内容だったと思います。この電話でしっかりと予約が成立していたことがわかりましたが、チェックインする少し前に電話が入るというのは、なかなかテンションが高まるものです。そのうえ、電話の内容が、あすなろ温泉旅館ならではのリソースを生かしたサービス内容であり、もう完全に私の心は鷲掴みされたわけです。また、機会がありましたら、あすなろ温泉旅館の宿泊記も執筆したいと思います。とても趣深い温泉旅館であり、私の中では、東北ナンバーワンの温泉旅館です。

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あすなろ温泉旅館 部屋名「王林」の部屋風呂。女将さんがチェックイン前に湯を貯めてくれていた。部屋中が独特のアブラ臭で充満する。ちなみに部屋名は、すべて「りんご」の品種となっている

これにて、①準備編を終了します。次回は、②初日は大出館宿泊編です。2015111916時からのエピソードを書いていきます。特に締め切りも設定しておらず、気ままに書いているため、次回はいつアップかわかりませんが、できるだけ早くアップするように努力します。